「真剣なまなざし」とか「真剣に取り組む」や「真剣な表情」と言うように、剣道用語の中で「真剣」という語ほど古今東西を問わず人々の口に上らせてきた言葉はありません。
ご存じのように真剣は、木刀や竹刀などに対して本身の刀剣を指します。
そしてそこから派生して、真剣勝負のように「死ぬ覚悟をもって」という意味合いから、更に「本気」「一所懸命」「まじめ」な姿勢や態度を言い表す言葉に転じ、広く一般に使われるようになりました。
古来日本人は、刀剣を単なる武器としてではなく、神聖で清浄なものとしてとらえてきました。
皇位の象徴である三種の神器に、「鏡」や「玉」とともに「剣」が位することは刀剣の神聖性を如実に示すものと言えましょう。
また武士が腰に帯びる刀は、侍の魂として崇めてきた長い伝統と歴史があります。
真剣、以て威厳に満ちた有徳の士であれかし、と
「真剣威徳」を掲げた次第です。
全日本剣道連盟会長
真砂 威
続篇
実はこの「真剣威徳」には大切な秘話が包み隠されております。
本来を申し上げますと、この「真剣」と同じ読みで神の剣と書いて「神剣」、神から授かったつるぎ剣なのです。 取りも直さず「神剣」は、皇位の標識である
三種の神器の一つ「天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ)」を指すものです。
古代伝説によりますと、第十二代けい景こう行天皇の皇子である日本武尊(やまとたけるのみこと)は、勅命を受け西の熊襲を征伐しました。
引き続き勅命を受け東の国へ赴きますが、その途上、
伊勢神宮に立ち寄り叔母の倭(やまと)姫より「天叢雲剣」を授かります。
そして日本武尊は東進しますが、駿河の国で賊に欺かれ焼き討ちに遭います。そのとき倭姫から授かった
「天叢雲剣」を抜き払って戦います。そして神剣の威徳をもって難をのがれ賊を成敗したのです。
日本武尊は天下に「神剣威徳」を轟かせることとなりました。この「天叢雲剣」は後に「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」と名が改められます。
全剣連といたしましては、「神剣」としたためるのはいささか畏れ多いので、このたび一般に広く使われている「真剣」を用いさせていただいた次第です
この「真剣威徳」の掲題を日本神話につながるものと受けとめていただければ幸いです。